一つの作品が完成するには、多くのスタッフの力が必要となる。『コードギアス 反逆のルルーシュ』もまた例外ではない。さまざまなプロフェッショナルの力が一つの結晶となり、『コードギアス』という作品に輝きを宿らせたのである。

「毎回脚本やコンテを見るのが楽しみだった」と『コードギアス』の作業を振り返る話す木村貴宏。
「最初に脚本を読む時から、どんな画面になるのかなと想像しながら読んでいました。新キャラクターがいれば、このキャラはこんな感じになるんじゃないのかな、と考えたり。そういうふうに自分で楽しみに出来る作品に参加できたことがうれしかったですね」

 そして『コードギアス』の現場で木村のもう一つの刺激となったのが、メインアニメーターの千羽由利子だという。

「これまでの作品でも、自分が実際に本編作業でキャラを描くときは『俺はこう描くぜ!』『自分が描くのがキャラクター表だぜ!』ぐらいの気持ちを込めて描いてきたんです。でも『コードギアス』で千羽さんの作画を見た時、初めて『この人みたいに描きたい』と思いました。それぐらいすごいと思いました。第1シリーズのSTAGE1は、僕が総作画監督に立って、千羽さんが作画監督だったんですが、僕のやることはほとんどありませんでした。今だに千羽さんからずっと、刺激を受けています」

まさにプロフェッショナルはプロフェッショナルを知る。この刺激のある関係があのテンション高い映像に繋がっていたのだろう。
その千羽さんは、気を付けていることとして体調管理を挙げていたが、実はそれは木村さんも同じ。

 「体調が悪いとやっぱり仕事の上がりにも影響が出るんです。出来上がりがどうしても、どこか調子悪そうな絵になっちゃうんですね。だからできるだけちゃんと仕事を出来る体調にしておくこと、は意識しています。アニメーターは人それぞれ自分流のやり方を持っていますが、自分は規則的にコンスタントにじっくりと仕事をしたいほうなんですよ。それはやっぱり体調にむらがあったらできないこと。ちゃんと寝られてちゃんとご飯が食べられる状態が、一番ストレスが少ないですからね」

 アニメーションの仕事は、長時間机に座る仕事。体調の管理は、長い期間安定した仕事をするのには欠かせないことのようだ。


 そんな木村が仕事中に欠かせない、というのが手袋。
「自分は手に結構汗をかくんです。そうすると紙がしわしわになったり、絵がこすれて汚くなる。それを防ぐために、手芸用の白い薄手の手袋の指の部分を切って使っているんです。使い始めてから結構、時間がたつんですが、今はは汗を取る目的に加えて、これを手につけることで、気持ちが切り替わって仕事モードになるようになりました」

 プロフェッショナルは体調だけでなく、メンタルのコントロールにも自分なりの方法を持っているのだ。