一つの作品が完成するには、多くのスタッフの力が必要となる。『コードギアス 反逆のルルーシュ』もまた例外ではない。さまざまなプロフェッショナルの力が一つの結晶となり、『コードギアス』という作品に輝きを宿らせたのである。

「『コードギアス』というのは、宝塚とか歌舞伎に通じる、特有の様式美を積極的に取り入れている世界なんです」と語る副監督の村田和也。
「たとえばゼロ仮面。あれは冷静に考えるとかなりコスプレ感のあるユニークな(笑)衣装ですよね。でも、それを演出やお芝居のケレン味などでかっこいいものに見せていくのが『コードギアス』なんです。それだけに、ルルーシュを筆頭とするキャラクターたちが、普段は実在感を持って受け止められているように描いていないと、作品が絵空事になってしまうんです。
おまけに『コードギアス』は企画が要求している情報量が多い。登場人物も多いし、場面もどんどん変わる。
アイテムもたくさん登場する。それらが同時進行で物語に関わるので、楽しく見てもらうためには、コンテや演出の段階で、いろいろとコントロールをしないと、楽しんで見てもらうフィルムにはならないんです」

アニメの魅力を「作り手が見いだした世界を、大勢の人が本物のように感じてくれること」という村田。
情報量のコントロールをすることも、作品世界を「本物のように感じてくれる」ための重要な要素といえる。

ところで、副監督とはどういう役回りなのか。
村田は「一言で言うと現場監督です」と説明する。

「アフレコやダビング、編集など社外の作業でスタジオにいないことのある監督に代わって、映像制作の責任者として現場をまとめる役割です」
たとえば村田は『R2』制作にあたり、一種の演出マニュアルを作成。担当者によって画面づくりの方法が変わらないようにしたという。こうしたマニュアルはほかの作品で用意されることはないという。ここに村田のプロフェッショナルとしてのこだわりがある。


そんな村田が演出作業をする時に手放せないのが1/24刻み(※)のストップウオッチ。
村田がある問屋と知り合ったことから生まれたこのストップウオッチは、アニメ制作に便利なため、アニメ業界内でも愛用者は少なくない。ところが現在、このストップウオッチは入手不可能という。
「心臓部分を作っていたドイツのメーカーが機械式から撤退してしまったんです。デジタル式でも、携帯アプリでもいいので、どこかのメーカーが24分の1刻みのストップウオッチを企画検討してくれるとうれしいのですが。少量ですけれど一定のニーズはかならずある商品ですので」

ストップウオッチメーカー様、乞ご検討。
※アニメは1秒24コマで制作されているので、1秒が24分割されていると作業の上で便利なのである