一つの作品が完成するには、多くのスタッフの力が必要となる。『コードギアス 反逆のルルーシュ』もまた例外ではない。さまざまなプロフェッショナルの力が一つの結晶となり、『コードギアス』という作品に輝きを宿らせたのである。

特殊効果、略して特効。聞き慣れない人も多いだろうが、アニメの画面の最終的な仕上がりを印象づける重要なポジションだ。たとえばメカの光沢、木製の椅子の質感など、特効が施されることで、そのものがそのものらしく感じられ、背景になじんで見えるようになる。
それはつまり、特効がその役割を果たせば果たすほど、普通の視聴者の意識に特効というポジションは浮かばなくなる、ということでもある。まさに黒子の役どころだ。

「仕上(スキャンした動画に色を塗る作業)が終わったデータを受け取って、そこで担当演出の方と相談し、フォトショップのツールを使って質感を加えていきます。倉庫にナイトメアフレームが何台も並んでいたりすると、作業はかなり大変になります。ピザにも、焦げ目やチーズの質感を特効で加えるんですが、千羽さんに、おいしそうだったと言ってもらえた時はうれしかったですね」


アニメの制作工程のかなりうしろに位置している特効。フィルム制作の追い込みにあって、内容だけでなく、より迅速な仕事が求められるポジションの一つでもある。

「追い込みになると、仕上の作業の終わりが未明になることも少なくないので、それに合わせてスタジオに入って、朝イチで撮影会社さんにデータを渡せるように作業をします。追い込みの時は、悩んでいる暇もないぐらいの忙しさで、だいたい2〜3日で1話分の作業を終える感じです」


もともと撮影会社で働いていたという野村。特効に転身し、スタジオに入って作業をするのは『コードギアス』が初めてだという。

「ものすごく微妙なニュアンスでのリテイクが当たり前だったので驚きました。ほかの作品で、そこまでこだわったリテイクを出しているのは見たことがなかったので」
と『コードギアス』の現場の驚きを語るが、野村もまたこだわりの人であるのは変わらない。

手が空いた時は、参考用の写真を見ながらコップなどを描いて、特効の入れ方を研究しているという。
「そのものがそれらしく見えた時が、この仕事でいちばんうれしい時です。そのためには、やっぱり本物をよく観察することが必要なんです」